« New Acoustic Camp -PRE.-featuring OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND@渋谷duo MUSIC EXCHANGE | トップページ | Peridots "Echoes & Walls" 2011@座・高円寺2 1日目 »

2011年6月24日 (金)

yuji nakada presents「SONG COMPOSITE 2011」@横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール

正直に言うと、コンポジにはそんなに思い入れがないので、あんまり期待していなかった。
でも、今回のコンポジがとにかく素晴らしくて何度も涙ぐんでしまった。

何より中田くんの表情が違う。
笑顔ひとつをとっても、影のない真っ白なものだった。
幸せそうに歌うなぁ、って何度も思った。
前のコンポジは、中田くんが自分の部屋でギター1本で歌うというようなコンセプトだったから、作りこまずにラフな印象が強かった。
そして椿屋四重奏の中での中田裕二ソロプロジェクトだったから、アーティストとして歌で魅せるというような力強いものではなかった気がした。
その反面、距離感は今回よりもずっと近くには感じられたんだけれど。
でも私は、1人のアーティスト中田裕二として臨んだ今回の姿がキラキラと眩しく思えた。
カバー曲よりも、オリジナルの新曲たちが際立っていた。
椿屋の、バンドの重責の鎖が外れて、のびのびと楽しそうに歌っているのが嬉しかった。

そんなことを思った直後に中田くんが言った。
「改めてお久しぶりです、中田裕二です。今回のコンポジ、もう仙台、盛岡、札幌と終了しまして、今日で4本目になるんだけど、すごくいいでしょ?」って笑う。
「前回はね、やっぱり椿屋四重奏って大きなものがあったから、また違ったかたちだったんだけど・・・」って。
その言葉を聞いて、‘ああっ、この人は・・・’って胸がしめつけらる。
これまでにも何度となくそんな場面があった。
私が心でダメ出しした時も、怒っていた時も、大絶賛したときも、今の自分の立ち位置を客観的に見ている彼の言葉に、信頼して安心させられてきた。
今回もそう。
‘このままずっと大好きな彼の歌声だけを信じてついていける’って、確信できた私がいた。
未開封のままに置いてある椿屋最後のベストアルバム、本やDVDを、このツアーが終わったら開封できそうな気がした。
私も心の中にある、椿屋四重奏というガチガチに封をされた記憶の鎖を、どうやらそろそろ外せそうだ。
そんな風に感じさせてくれた、ソロアーティスト中田裕二のSONG COMPOSITEだった。

 

 赤レンガホールでは何度かスタンディングで観たことがあったんだけれど、その時にはあんまり良い印象の会場ではなかった。
でも椅子席だとまったく印象が変わる!!
ゆったりとした空間に高い天井。
1曲目で歌われた『少年時代』の中田くんの声が、風に乗って空に吸い上げられるように美しく響いた。
なんて贅沢なんだろう、なんて透明で清らかな歌声なんだろうって、最初から心を釘づけにされた。
これまでの椿屋の艶のある彼のイメージではなく、天使が舞い降りてきそうな雰囲気だった。
中田裕二をこんな風に思ったのは初めてだった。
同じ声のはずなのに、なんだか纏っている気配が違って見えた。

「ICE BOXって知ってる?」
会場からの反応がないと、「いや、間違いなく30代以上の人は知ってるでしょ?」って、ニッっていじわるそうに笑う中田くん。
そんな姿は以前のままだ。
「『落日』って当時CMで使われた曲があって、どうしても歌ってみたかったんだ」と言って歌う。
やっぱり漂う透明感。
これはこの広い会場のせい???

『リバースのカード』『サンデーマンデー』と、自身の曲が続く。
オリジナル曲は、しっかりと彼の色をしていた。
そう、これが中田裕二の歌なんだって、魅力なんだって心を熱くしながら聴いた。

今回のコンポジ、例えていうなら『旅するカラオケパブ』なんだって(笑)
でもちっともカラオケの雰囲気ではない。
ジャズバーのような、ムードある大人の空間。
でも後半で、「いかに歌で酔わせるかがコンセプト」とも言っていた。
まさに酔わされてしまった『Moon River』とオリジナル曲の『ベール』だった。
この『ベール』がものすごく良くって、まさにベールのかかった何かを剥いでいくように感じた曲だった。
この日に披露された新曲は、どちらかいうと穏やかで明るい曲調のものが多かったのだけれど、この曲だけは赤い炎の中に立っているように熱い曲だった。
冷たく突き放されたのに、腕をグッとつかまれて再び引き寄せられる感じ。
こういうのを胸を焦がすっていうんだなって思いながら、涙いっぱいの瞳で聴いた。

坂本冬美の『また君に恋してる』をはさんで、もう1曲オリジナル曲。
「続けてバラードいっちゃうよ」とか紹介してたかな?(笑)
『白日』というタイトルのその曲は、少しだけ『夜の行方』に似た曲だった。
どちらかというと、白昼夢というような雰囲気がした。
この日の照明が随所で心憎い演出をしていて、この曲のサビの部分で思いっきり客席を明るく照らすのだ。
夢から醒めたような、だけどまだ現実の世界ではないような、今を消してしまうほどの光の中に溶けていったようなこの曲だった。
この7曲までが、私の中で鮮烈なものだった気がする。

中盤は、ちょっと心を落ち着けて聴いていた。
『Woman~Wの悲劇より』は、リアルタイムで映画を観た世代。
おおっ!!って、薬師丸ひろ子や高木美保の名シーンが頭に浮かぶ(笑)
『青春の影』もよかった。
で、次に槇原敬之『もう恋なんてしない』を歌うんだけど、この曲でなぜか涙が溢れて止まらなくなった。
とくに思い入れのある曲ではない。
だけどこの曲を歌う中田くんが、包み込むような優しさと幸せそうな笑顔で歌う。
こんな風に楽しそうに歌う彼を初めて観たからかもしれない。
まるで何かの憑き物が落ちたようだった。
浄化されたみたいな雰囲気とでもいうのかな?
私、泣いているんだけどなぜか笑顔だった。
‘ああよかった’って思っていた。
相変わらずにこういうところは、母親目線なのかもしれない(苦笑)

この後懐かしい曲たちを、彼の伸びていく透明な声を本来のコンポジの意味で楽しんだ。
‘歌、うまいなぁ’って、以前よりもずっとそう感じた。
歌われる選曲に驚いたり、嬉しく思いながら聴いた。
だけど本編ラストの『ひかりのみち』には、やっぱり少しだけ涙ぐんでしまう。
なんだか本当に、空から一筋の光の道が彼を照らすように差し込んで見えたのだ。
何度も書いているけれど、彼の歌声をこういう風に感じて聴いたのは初めてだった。
大きい会場のせいかな?
たっぷりとあるスペースの席に座って、ゆったりと聴けたせいなのかもしれない。
彼的にも「非常に良い出来で気持ちがいい」と言っていた。

アンコールではおちゃめな顔を見せてくれる。
「会場のみんなからリクエストを」なんて言いながらも、案外歌いたい曲は決まっているようだ。
「どんな感じがいい?」って聞くと、どこからか「エロ系!!」なんて声。
「そういう直接的なのは受け付けません」って笑いながら、「ワインで言うと、白と赤はどっちがいい?」と聞く。
赤が多かった気がしたけれど、彼の気分で白になる。
「じゃあ白の甘口と辛口はどっち?」
これもほとんど彼の気分で甘口に。
で、甘口白ワインの選曲は久保田利伸『Missing』。
思わず‘おおーーっ!!’って声を上げる。
いやいや、私の青春の頃の曲なので。
‘そんなに甘い曲だっけ?’って最初は思ったんだけれど、彼が歌うこの曲はべたべたしすぎないすっきりとした甘さのように感じた。
でも一瞬、その歌声に背中からそっと抱きしめられるような感覚になった。
う~ん、さすがは中田裕二だ(笑)
「次はどんなのがいい?」って聞いたら、誰かが「横浜っぽいやつ」って言う。
嬉しそうに微笑んで、鼻歌風に『ふりむけばヨコハマ』『よこはま・たそがれ』などをご機嫌顔で歌ってくれた。
で、次には赤ワインの深みのあるやつ。
山下達郎『エンドレスゲーム』。
これも‘そんなに赤だっけ?’って思ったけれど、彼が歌うと納得のフルボディの赤ワインになっていた。

どの曲もそうなんだけれど、中田くんはカバー曲を自分の曲のように歌う。
そういう人はたくさんいるけれど、彼は歌で演じているような気がした。
椿屋の時にも何度かそう表現したけれど、‘彼はactorだなぁ’って今日のステージでも思わされた。
彼の中に思い描かれた曲のイメージを、1曲1曲切り替えのスイッチを持っているかのように全く別の世界をつくる。
そのたびに舞台セットが変わる、ミュージカルのようにさえ感じた。
彼は歌で世界を変える表現者なのだと、改めて強く感じさせられた。
最後に「最近みんなに歌われているけど」って、坂本九の『見上げてごらん夜の星を』をしっとりと歌い上げて終了となった。

今回のコンポジは本当に良い。
何公演も行きたくなった熱い椿屋のライブとはまた違うけれど、いつまでもその余韻を楽しめるそれこそ白ワインのような良さがあるような気がした。
あくまでも、赤ワインではなく白なんだけど。
あっ、でもロゼも似合うかな?

<セットリスト>
01.少年時代/井上陽水
02.落日/ICE BOX
03.リバースのカード/中田裕二
04.サンデーマンデー/中田裕二
05.Moon River/映画『ティファニーで朝食を』主題歌
06.ベール/中田裕二
07.また君に恋してる/坂本冬美
08.白日/中田裕二
09.~Woman~Wの悲劇より~/薬師丸ひろ子
10.青春の影/チューリップ
11.もう恋なんてしない/槇原敬之
12.Like A Star/Corinne Beiley Rae
13.恋人よ/五輪真弓
14.水色の雨/八神純子
15.涙そうそう/森山良子、他
16.エンドレス/中田裕二
17.ウイスキーが、お好きでしょ/石川さゆり
18.テネシーワルツ/江利チエミ
19.ひかりのまち/中田裕二
EN
20.Missing/久保田利伸
 -『ふりむけばヨコハマ』『よこはま・たそがれ』ワンフレーズづつ-
21.エンドレスゲーム/山下達郎
22.見上げてごらん夜の星を/坂本九

帰りながら友人と今日の感想を話す。
「天使が舞い降りてきそうな雰囲気だった」と言った私に、どこか物足りなそうな友人だった。
彼女も同じように感じたらしい。
そういう彼女は、椿屋の艶と影がお気に入りだった。
確かにその要素は全くなかった。
唯一『ベール』にその一部を感じたくらいだ。
でもね、中田裕二のことだから、すぐに次の舞台でこちらを驚かすようなアクションを起こしてきそうな気がする。
このツアー中にもレコーディングに入ると言っていたし、新曲たちが際立つほどに心を動かす輝きを放っていたから。
やっぱり私は、彼の声や表現が大好きなのだ。

|

« New Acoustic Camp -PRE.-featuring OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND@渋谷duo MUSIC EXCHANGE | トップページ | Peridots "Echoes & Walls" 2011@座・高円寺2 1日目 »